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東京地方裁判所 昭和31年(行)58号 判決

東京都杉並区天沼一丁目一四一番地

原告

大塚一郎

都同 区天沼一丁目一九〇番地

被告

荻窪税務署長 藤田藤吉

右指定代理人

堀内恒雄

小林忠之

国吉良雄

渡辺勇

右当事者間の昭和三十一年(行)第五八号課税処分取消請求事件について当裁判所は次のように判決する。

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は適式な呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭しないがその陳述したものとみなされた訴状によれば、

被告が昭和三十年五月三十一日原告に対してなした原告の昭和二十九年度分所得税の総所得金額を金二十一万三千円と更正した処分のうち金十八万円を超過する部分はこれを取消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求める旨申立て、その請求の原因として、

一、原告は昭和三十年三月十五日被告に対し昭和二十九年度分所得税に関し総所得金額を金十八万円として確定申告したところ、被告は同年五月三十一日附で総所得金額を金二十一万三千円と更正してその頃原告に通知した。

二、原告は右処分を不服として昭和三十年六月二十日被告に対し再調査の請求をしたところ、被告は同年七月二十八日右請求を棄却しその頃原告に通知した。

三、そこで原告は同年八月二十七日東京国税局長に対し審査の請求をしたところ、東京国税局長は昭和三十一年三月二十七日右請求を棄却するとの決定をして同年同月二十九日原告に通知した。

四、しかしながら被告の前記更正処分のうち金十八万円を超える部分は達法であるからその取消を求めるため本訴請求に及んだ。というのである。

被告指定代理人は本案前の答弁として、主文同旨の判決を求め、その理由として、原告のなした本件審査請求に対する東京国税局長の審査決定は昭和三十一年三月二十三日附でなされ、右決定は同年三月二十五日原告に通知された。しかるに本件訴は原告が右通知を受けた日から三カ月以上を経過した昭和三十一年六月二十八日に提起されたもので出訴期間経過後の不適法な訴であるから却下さるべきであると述べ、

本案について原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として請求の原因第一項及び第二項の事実は認める、第三項の事実のうち原告が昭和三十年八月二十七日東京国税局長に対し審査の請求をしたこと及び日時の点を除き東京国税局長が右審査請求を棄却してこれを原告に通知したことは認めるが、その余の事実は否認すると述べ、立証として乙第一乃至第三号証を提出した。

理由

まず本訴の適否について判断する。

原告が昭和三〇年三月一五日被告に対し昭和二十九年度分所得税に関し総所得金額を金十八万円として確定申告をしたところ、被告は同年五月三一日付で総所得金額を金二十一万三千円と更正してその頃原告に通知したこと、原告は右処分に対し同年六月二十日被告に再調査の請求をしたが、被告は同年七月二十八日右請求を棄却し、その頃原告に通知したこと、原告は更に同年八月二十七日東京国税局長に対し審査の請求をしたところ、東京国税局長は右請求を棄却するとの決定をして原告に通知したこと(但しその決定の日と決定が原告に通知された日を除く)は当事者間に争がない。

原告は東京国税局長の右審査決定は昭和三十一年三月二十七日付でなされ、同年同月二十九日原告に通知されたと主張し、被告はこれを争うのでこの点について判断する。

文書の方式及び趣旨により公務員が作成したものと認められるから真正に成立したと推定される乙第一乃至第三号証によると、本件審査決定は昭和三十一年三月二十三日付でなされ、右決定通知書は同月二十四日東京中央郵便局より書留配達証明郵便で原告に宛て発送され、同月二十五日原告方に配達されたことが認められる。

したがつて本件審査決定は右決定通知書が原告方に配達された昭和三十一年三月二十五日原告に通知されたものというべきである。ところで被告のなした前記更正処分の取消を求める訴は原告が右通知をうけた昭和三十一年三月二十五日から三カ月以内である同年六月二十五日までに提起することを要することは、所得税法第五一条第二項の規定に徴し極めて明らかであるところ、本件訴は右期間を経過した同年同月二十八日当裁判所に提起されたことは記録上明らかであるから、本件訴は出訴期間経過後の不適法な訴であるといわなければならない。

よつて本件訴は本案について判断するまでもなく、これを不適法として却下することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟特例法第一条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のように判決する。

(裁判長裁判官 飯山悦治 裁判官 松尾厳 裁判官 越山安久)

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